美しい歌 ~好きな歌の訳、解釈、若しくは雰囲気の紹介

好きな歌の訳、解釈、若しくは雰囲気の紹介

Christmas Card from a Hooker in Minneapolis

Christmas Card from a Hooker in Minneapolis
(Tom Waits)



ミネアポリスの売春婦から来たクリスマスカード◆


チャーリー、私、妊娠したの
住んでるのは9番街
エロ本屋の上のとこ
ユークリッド街から外れたところよ
薬はやめたの
酒もやめたわ
旦那はトロンボーンを吹いている
鉄道で働いているの


彼は私のこと愛してるんだって
この赤ん坊は彼の子じゃないけど
育ててくれるんだって
自分の息子みたいにね
彼のお母さんがはめてた指輪をくれたの
毎週土曜には踊りにつれてってくれるのよ


チャーリー、あんたのことを考えるわ
ガソリンスタンドを通り過ぎるたびにね
あんたが髪につけてた
いろんなグリースとか
あのレコードまだとってあるよ
リトル・アンソニー・アンド・ザ・インペリアルズの
レコードプレーヤーは誰かに盗まれちゃったの
おかしいでしょ?


チャーリー、マリオが薬で捕まったとき
もうどうしていいかわかんなくて
オマハに戻って家族と暮らそうと思ったら
知ってる人はみんな死んだか刑務所だったの
で、ミネアポリスに戻ってきた
今度は私、しばらくここにいようと思うわ


チャーリー、私、自分は幸せだと思ってる
あの事故以来はじめてよ
薬に使ってたあのお金
全部手元にあればよかったわ
そしたら中古車を売り場ごと買うのに
で、どの車も売らないの
毎日違う車に乗るのよ
気分次第でね


チャーリー、お願いよ
ほんとのことを聞いてちょうだい
私には夫なんていないのよ
トロンボーンなんて吹いてない
お金を貸してほしいの
弁護士に払うのよ
ねえ、チャーリー
私、保釈してもらえることになったの
今度のバレンタインデーに





※※※

こういう詩は、トム・ウェイツTom Waits)はすごくいいですね。
全然かっこよくない、むしろ駄目な部類の人の心を暖かな視線で書いてくれます。


この歌の分類はとても迷いました。
クリスマスの歌でもないけど、とりあえずクリスマスに入れておきます。


この歌詞は、チャールズ・ブコウスキー(Charles Bukowski)の詩集「The Roominghouse Madrigals」の中の「Charlie, I'm pregnant」という詩を下地にしているそうです。
その詩そのものではないそうですが、最後の意外な結末も、この詩によるところだとか。
こちらも読んでみたいのですが、翻訳は出ていないようですね。今、英語版を注文中です。


最後に、ニーコ・ケイス(Neko Case)のバージョンをご紹介します。
女性歌手だと、本人が語っているように聞こえます。
トム・ウェイツの歌だと、もらったカードの文章を読んでいるように聞こえるのですが。