美しい歌 ~好きな歌の訳、解釈、若しくは雰囲気の紹介

好きな歌の訳、解釈、若しくは雰囲気の紹介

At the Ballet(ミュージカル「コーラス・ライン」より)

At the Ballet
(Edward Kleban)


◆バレエでは◆




【シーラ】
父さんはいつも格下の結婚をしたと思っていた
自分でそう言っていたの
母さんにプロポーズしたとき、こう言ったそうよ
お前にとって俺はもう最後のチャンスだぞって
そして母さんは22歳だったのに
父さんと結婚した


父さんとの暮らしは楽しいことなんかなかった
気取らない生活どころじゃなかった
私が5歳のときのこと、母さんが
車の中でイヤリングを見つけた
私にもそれが母さんのものじゃないって分かった
でもこんなこと今あなたが聞きたいことじゃないわね
父さんは優しくなかったの
母さんにも
私にも


でも
バレエの世界は何もかもが美しかった
きれいな男性が白い衣装をきた美しい娘を抱き上げる
そう
バレエの世界は何もかもが美しかった
バレエをしていれば、私は幸せだった


――これが私がバレエを始めた訳よ


狭くて急な階段を上った上
メトロノームのような声にあわせ
狭くて急な階段を上った上
そこはパラダイスではなかったけれど
心休まる場所だった



【ビビ】
母さんはいつも私のことを
将来は魅力的になるといっていた
「人と違う」という風に言っていた「特別なものがあって
とても個性的だから」って
私は8つか9つだったけど
母さんのことが大嫌いになった


だって
人と違うっていうのは素敵なことだけど、それはかわいいというのとは違う
かわいいって言うのは、その言葉どおりの意味よ
「人と違ってる」って人なんか見たことがない
そんなこと誰でもわかる
私は決して美しくなんてなれない
はっきりしてるわ
母さんがそうじゃないってことは
私だって…ね


バレエの世界では誰もが美しい
すべての王子には白鳥がいる
そう
バレエの世界では誰もが美しい
私はきれいだった
バレエをしているときは



【マギー(語り)】
私は両親の結婚をつなぎ止めるために生まれたんです
でも父さんは私と母さんが退院するのを迎えに来たとき
こう言ったそうです
「これでうまくいくかと思ったが
そうでもないようだな」
数か月後、父は出て行って、二度と帰ってきませんでした
ともかく、私は空想の世界で遊んでいました
リビングルームで踊っていました
こうやって腕を上げて
空想では私にはインディアンの酋長がいて
こう言ってくれたの
「マギー、踊らないかい?」
私は答えたものです「ええ、とても!」



…わかりきったこと

…プロポーズの言葉

…彼らの結婚生活のために生まれたけど

…父さんは言っていた

…母さんは言っていた

…私は居間で踊っていた

…父さんは優しくなかった

…母さんがきれいじゃなければ


インディアンの酋長はこう言った
「マギー、踊らないか」
私は答えた「喜んで」


バレエの世界はすべてがきれいだった
腕を上げるとそこには必ず誰かがいてくれる
そう、バレエの世界はすべてが美しかった
バレエの世界では!



バレエの世界ではすべてが美しかった

きれいになれた…
幸せだった…
踊りたかった…
バレエの世界で





※※※

1975年初演のブロードウェイ・ミュージカル「コーラス・ライン(A Chorus Line)」のナンバー。
 舞台のオーディションという設定の物語で、「なぜダンスを始めたのか話してほしい」という言葉に、ダンサー達は自分を語ります。
 この歌は、シーラとビビとマギーの歌で、華やかな世界の裏の家庭での苦悩を歌っています。


 歌詞は、映画版を参考にしました。舞台版では「狭く急な階段の上(Up a steep and very narrow stairway)」で始まる繰り返し部分がビビのパートにもあります。

 また、それぞれ歌い手が誰か書きましたが、実際には繰り返し部分など、3人で歌うところが多々あります。


 舞台版のこの歌もご紹介しておきます。


※2014.9.24追記

舞台版と映画版では、マギーの語り部分が、少し違っています。
舞台版では次のようなものです。


【マギー(語り)】
私は両親の結婚をつなぎ止めるために生まれたんです
でも父さんは私と母さんが退院するのを迎えに来たとき
こう言ったそうです
「これでうまくいくかと思ったが
そうでもないようだな」
    数か月後、
ともかく、私は空想の世界で遊んでいました
リビングルームで踊っていました
こうやって腕を上げて
空想では私にはインディアンの酋長がいて
こう言ってくれたの
「マギー、踊らないかい?」
私は答えたものです「ええ、とても!」


今まで上の本文でこちらの訳を紹介していましたが、これは舞台版だったので映画版の内容に差し替えました。