美しい歌 ~好きな歌の訳、解釈、若しくは雰囲気の紹介

好きな歌の訳、解釈、若しくは雰囲気の紹介

This Old Town

This Old Town
(Janis Ian & Jon Vezner)


◆この古い町◆



1929年、この町は消えていても不思議はなかった
それは私たちがスープを求め
プライドを捨てて
配給の列を作っていたとき
1931年、この町は消えていても不思議はなかった
雨がまったく降らず
おなかを満たすのは空気ばかり
肺を満たすのは砂埃ばかりと言う頃
そしていよいよ私たちの時代が来たと思った頃


 この古い町は人の手で作られた
 砂塵の舞う先祖の土地に
 この砂の下には岩があるはず
 まったく何て驚きだ
 この町は今でもしっかり立っている



1944年、この町は消えていても不思議はなかった
最後の男が戦争に行き
帰ってきた人も
すっかり変わってしまっていたとき
1956年、この町は消えていても不思議はなかった
竜巻が襲い
総ての希望が
がれきの下に葬られ
もうおしまいだと思った時


 この古い町は人の手で作られた
 砂塵の舞う先祖の土地に
 この砂の下には岩があるはず
 まったく何て驚きだ
 この町は今でもしっかり立っている


どこか遠いところで
街の灯が光を放ち
通りにはネオンが夢のように輝いて
時々こちらを呼んでいる
私の子供の子供らが
どうして出ていかなかったのと訊ねたら
こう答えるだろう
町の心というのは、なじみの人たちで
その人たちの声が故郷に呼び戻すんだよ


 この古い町は人の手で作られた
 砂塵の舞う先祖の土地に
 この砂の下には岩があるはず
 まったく何て驚きだ
 この町は今でもしっかり立っている





※※※
この歌の作詞はジャニス・イアンJanis Ian)ですが、彼女が歌ったバージョンは発売されていないのではないかと思います。
私はナンシー・グリフィスのものしか聞いたことがありません。


この歌に歌われているのは、
・1929年:世界大恐慌
・1931年:ダストボウル(大砂塵が農場を大規模に襲った災害)
・1944年:第2次世界大戦激化
・1956年:竜巻
です。


ダストボウルとは、アメリカ中央部、グレートプレーンズと呼ばれる地方で1931年頃断続的に起こった巨大な砂嵐です。
また、それが起こった地域のことも「ダストボウル(砂塵地帯)」と呼ばれています。


数々の災害や時代の不運に襲われても、決して倒れることのない町。
そこには故郷を思う人々がいる。そんな歌です。

今、災害の復興に携わっている人たちの努力と故郷を思う気持ちが報われる日が1日も早く来るのを祈っています。