美しい歌 ~好きな歌の訳、解釈、若しくは雰囲気の紹介

好きな歌の訳、解釈、若しくは雰囲気の紹介

Boots of Spanish Leather

Boots of Spanish Leather
(Bob Dylan)


◆スペインの革のブーツ◆



僕は海に出た
出航したのは朝のこと
海の向こうから
君に送るれるものはあるだろうか
僕が上陸する土地から


あなたから私に送れるものはなにもありません
何もほしいものはないのです
ただあなたに戻ってきてほしい
寂しい大海を越えて


でも何か高級なものがあるといいんじゃないだろうか
金や銀でできたものはどうだろう
マドリッドの山で取れるものや
バルセロナの海岸で手に入るものではなくて


もしも暗夜の星や
深海のダイヤモンドが手にはいるとしても
そんなものよりあなたの甘いキスを選ぶでしょう
それだけが私のほしいものです


僕は長い間離れていることになる
それだけが君に許してほしいことだ
僕のことを思い出せるように
何か送れるものはないだろうか
君が悩まず日々をおくれるようにするために


私に何を頼みたいんですって?
それは私が悲しむだけです
私は今日望んだものを
明日も望むでしょう


寂しい日々を送っていると手紙が届きました
それは航海中の彼からでした。
「いつもどるか決めてない。
戻りたくなったら戻る」


あなたはそんな風に考えているのでしょう
心はどこかを彷徨っているのでしょうね
あなたの心にもう私はなく
あなたが向かっている国ばかり思っているのでしょう


それなら、西の風には用心してください
嵐には用心を
そうそう、私に送ってもらえるものがありました
スペインの革を使ったスペインのブーツです



※※※
★最後に追記があります★

マドリッドバルセロナもスペインの街の名前です。
男は未知なる世界に向けてスペインから海に出て行きます。
スペインに残してきた恋人に贈り物をしようといいますが、彼女が望むのは、彼だけ。
それで、彼の心が故郷には戻らないと知った彼女は最後に「スペインの革で作ったスペインのブーツが欲しいわ」と言うのです。

ボブ・ディランの歌ですが、私はナンシー・グリフィスのカバー版で初めて聞きました。


ナンシー・グリフィス版の動画もご紹介します。




太田裕美の「木綿のハンカチーフ」(作詞:松本隆)という歌は、この歌が元になっているそうです。
ほぼ同じ構成で、舞台を日本に、田舎から東京へ旅だった男に翻案されています。


★追記★
コメントで、ayakomaruさんからご指摘を受けました。
これは、実は去っていくのが女性で、残されたのが男性という歌だそうです。
少し調べたら、すぐにそう書いてあるものがたくさん出てきました。(^^)ゞ
男女が変わると歌の雰囲気も変わるので、本当は訳しなおすべきかもしれません。
でも、まあ、これが私が最初に読んだ解釈(この解釈で「いい詩だなぁ」と思ったわけで)ということで、このままにしようと思います。
このように読める詩でもありますし、男女が正しい訳も、探せば他に沢山ありますしね(^^;



★追記の追記
ふと、この歌を聞いたときにマザー・グースの「ボビー・シャフトー(Bobby Shfttoe)を思い浮かべていたことを思い出しました。
船乗りになったボビー・シャフトーのことを「帰ってきたら私と結婚するの」と歌っているのは女性でしょう。私はこの歌と重ね合わせて、待っているのが女性だと信じてしまったのだと思います。
ボビー・シャフトーは簡単な歌ですが、シンプルなラブソングでもあります。
こちらで訳してみました。
http://d.hatena.ne.jp/threeleaves/20120519/1337429176