美しい歌 ~好きな歌の訳、解釈、若しくは雰囲気の紹介

好きな歌の訳、解釈、若しくは雰囲気の紹介

Corpus Christi Carol

Corpus Christi Carol


◆コルプス・クリスティ・キャロル(聖体のキャロル)◆



   ルリ ルレイ ルリ ルレイ
   鷹は我が友を連れ去った


彼を連れて高く低く
彼を連れて茶色の庭へ


その庭にあるのは一つの館
そこにかかっているのは紫のかたびら


館の中には一つの寝台
赤の黄金の布がかかる


寝台に臥せっているのは一人の騎士
彼の傷は昼となく夜となく血を流す


寝台の傍らにひざまずくのは一人の乙女
彼女の嘆きは夜となく昼となく続く


寝台の傍らに一つの石
『キリストの御身』と刻まれた


 

Lulley, lully, lulley, lully,
The faucon hath born my mak away.


He bare hym up, he bare hym down,
He bare hym into an orchard brown.


In that orchard ther was an hall,
That was hanged with purpill and pall.


And in that hall ther was a bede,
Hit was hangid with gold so rede.


And yn that bede ther lythe a knyght,
His wowndes bledyng day and nyght.


By that bedes side ther kneleth a may,
And she wepeth both nyght and day.


And by that bedes side ther stondith a ston,
"Corpus Christi" wretyn theron.




※※※
16世紀初めごろに書かれた古い詩です。
古い英語で書かれていますので、訳も古文にすべきかもしれませんが、その詩の内容を主に伝えたいと思い、現代文での訳をしました。
(それに間違った古文にしたくありませんから。^^;)



詩の背景を知らなくても、どこか幻想的で不思議な雰囲気を感じます。
ウィキペディアwikipedia:en:Corpus Christi Carol)によれば、これはアーサー王伝説の聖杯の物語と関係があるという説もあるとのことです。
カーボネック城の主である王は決して癒えない傷を負いそのため国土が荒廃する(茶色の果樹園)ため、勇者たちが聖杯を探しに出るのだそうです。(wikipedia:漁夫王
聖杯は、磔にされたキリストの血を受けたものとも言われています。
また、キリストの処刑そのものを表している詩という解釈もあります。
人間の罪のために磔にされたキリストの傷は、人間の罪が侵し続ける限り血を流し続けます。横たわったキリストの傍らで嘆く乙女は聖母マリアです。


この謎めいた詩が魅了するのか、たくさんの作曲家が曲をつけ、演奏しています。
上で紹介したのはおそらく最も有名なベンジャミン・ブリテン(Benjamin Britten)によるものですが、ほかにも有名なところでは、それを元にジェフ・バックリーJeff Buckley)も曲を作っていますし、ほかにも合唱用に作曲されたものもいくつかあります。
曲によって、歌詞は少しずつ違っているのは、古い詩のため異なるものが伝わっているためと、古い英語をある程度現代語にしてわかりやすくしたためがあると思います。


以下でいくつかご紹介します。


ブリテンの曲を基にしたもの




★トロンド・クベルノ(Trond Kverno)による合唱曲



★ジェフリー・バーゴン(Geoffrey Burgon)による合唱曲