美しい歌 ~好きな歌の訳、解釈、若しくは雰囲気の紹介

好きな歌の訳、解釈、若しくは雰囲気の紹介

On Grafton Street

On Grafton Street
(Nanci Griffith)



◆グラフトンストリート◆



クリスマスのグラフトン街
人々の肘に小突き回される
これは私の思い出の場所ではない
この町では私はまるでよそ者
行き交う人々は見知ったもののようだし
流れる音楽には聞き覚えがあるけれど
目を閉じてみると私の心は
5000マイルの彼方にあることに気づく




あなたなしで私の世界がまわっているなんておかしいわ
あなたなしで生きていけるなんて
思ったことはなかったのに
こんな風に笑うのはあなたのことを思ったときだけだったのに
あなたはまるで
ひしめく人の群れを離れた土曜の夜だわ



ビューリーズストアの前で
ろうそくの明かりの側で楽団が演奏している
若い修道女がドアのそばの席を
譲ってくれた
私は彼女に話したい衝動に駆られた
私たちが会ったシスター達のことを
どんな風に彼女らがろうそくを灯し
私があなたのために祈りの言葉を言ったかを



★くりかえし



教会の鐘が聖なる時間が来たことを告げ
私は雨の中出て行った
私が最後にあなたの名前を口にしてから
20年以上たつ
あなたは今プレーンズを出て
ダラスの近くに家を持っていると聞く
グラフトン街にいてあなたを思い出すなんて
本当にどうしてなんだろう



★くりかえし



クリスマスのグラフトン街は
人々の肘に小突き回される
私が今持っているものは思い出だけ
私は見知らぬ町にたった一人





※※※
ナンシー・グリフィスのクリスマスが舞台の歌です。
でもいわゆるクリスマスソングという感じはしません。
訳したときの説明、というか言い訳を。
・グラフトンストリート
アイルランドの首都ダブリンにある通りの名前です。ビューリーズというのも実在するカフェの名前です。
・人の波に飲み込まれる
元の歌詞は「The elbows push you 'round」ひじに小突き回されるという意味です。
それほどの人ごみであり、本人は溶け込めていない、という感じがあります。
・ひしめく人の群れを離れた土曜の夜だわ
「ひしめく人の群れを離れた」は「Far from the madding crowd」で「俗世間を離れた」といったニュアンスです。
もともとはトーマス・グレイの詩「Elegy Written in a Country Churchyard(田舎の墓地で詠んだ挽歌)の一節で、トーマス・ハーディが自分の小説のタイトル(Far from the Madding Crowd(はるか群集を離れて)」に使ったものです。
そして、「土曜の夜」ですが…。元の歌詞は、
You're a Saturday night
Far from the madding crowd
まさに「あなたは土曜の夜」といっているのですが、どのようなニュアンスなのかよくわかりません。すみません。
多分「疲れる平日から離れて心安らぐとき」ということではないかと想像しています。
・プレーンズ
アメリカに広がるグレートプレーンズのことです。テキサス州ダラスはグレートプレーンズから外れているようです。
ダラスとダブリンは大体5000マイル離れています。
ちなみにナンシー・グリフィスの故郷はテキサス州オースティンでぎりぎりプレーンズに入っているのかな、と思います。



ナンシー・グリフィスには、この歌と似たモチーフの歌「So Long Ago(ずっと前に)」があります。
いつかこちらの訳したものも載せたいと思います。


※「So Long Ago」の記事を載せました。2010-11-20